
こんにちは。ワークスタイル‐リデザイン編集部です。皆さんは日々のPC作業でトラックボールを使っていますか。指先だけでカーソルを操れる快適さは一度味わうと病みつきになりますが、長く使っているとボールの滑りが悪くなったり操作感が重いと感じたりすることはありませんか。
そんな時に頼りになるのが、実は釣具用のコーティング剤であるボナンザです。今回は、シリコンスプレーなどの代用品とは一線を画すこのアイテムを使って、トラックボールのメンテナンスを行い、新品同様の滑りを取り戻す方法をご紹介します。ボナンザはどこで売ってるのか、失敗しない塗り方や白くなる現象への対策など、気になるポイントも余すことなく解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください。

トラックボールのメンテナンスにボナンザが推奨される理由
滑りが悪い根本原因と劇的な解消法
トラックボールを愛用しているユーザーにとって、避けては通れない最大の悩みが「操作感の悪化」です。購入した当初は、まるで無重力空間にあるかのように指先ひとつでスルスルと動いていたボールが、いつの間にか重たく感じたり、カーソルを動かし始める瞬間に「カクッ」とした引っかかりを感じるようになったりします。特に、デザイン作業や表計算ソフトでのセル選択など、1ピクセル単位の精密な操作を求められるシーンにおいて、この微細な引っかかりは極めて大きなストレスとなります。
この滑りが悪くなる現象の根本的な原因は、物理学で言うところの「静止摩擦係数」と「動摩擦係数」の差、そして「スラッジ」と呼ばれる汚れの堆積にあります。トラックボールは構造上、ボールを「支持球」と呼ばれる3つの小さな点(人工ルビーやセラミック製)で支えています。ボールと支持球の接点には非常に高い圧力がかかるため、わずかな汚れでもブレーキとなりやすいのです。
日々の使用により、私たちの手からは皮脂や汗が分泌され、ボールに付着します。ボールが回転することで、その油分は支持球へと運搬され、そこに空気中のホコリや手垢が混ざり合うことで、黒く粘着質のあるカス、通称「スラッジ」が形成されます。このスラッジが支持球の周りにこびりつくと、ボールの滑らかな回転を阻害し、いわゆる「スティック・スリップ現象(引っかかりと滑りが交互に起きる現象)」を引き起こすのです。
多くの人はここで「掃除」を行いますが、単にスラッジを取り除いただけでは、ボール表面の微細な摩耗や、プラスチック素材自体の摩擦抵抗までは解消できません。そこで真価を発揮するのが、釣具用コーティング剤であるボナンザです。ボナンザの主成分であるフッ素樹脂(PTFE)は、固体物質の中で最も摩擦係数が低い物質の一つとして知られています。これをボール表面にコーティングすることで、物理的な摩擦を極限までゼロに近づけることができます。
ボナンザによって形成された被膜は、ボールと支持球の間に滑らかな層を作り出し、失われていた「滑り」を復活させるだけでなく、新品時以上の軽快な操作感を実現します。その感覚はしばしば「ボールが浮いているようだ」「氷の上を滑らせているようだ」と形容されるほど劇的です。単なる汚れ落としではなく、表面改質による性能アップグレードこそが、ボナンザが推奨される最大の理由なのです。
シリコンスプレーなどの代用品との違い
メンテナンス用品として、ホームセンターなどで安価に入手できる「シリコンスプレー」が比較対象としてよく挙がります。「滑りを良くする」という目的は同じですが、トラックボールというデリケートな入力デバイスに使用する場合、その特性には決定的な違いがあり、安易な代用は推奨できない理由があります。
最大の違いは、施工後の「被膜の状態」にあります。シリコンスプレーの多くは、塗布後にシリコンオイルの薄い油膜を形成します。これは一見滑りが良くなったように感じますが、表面が「ウェット(湿潤)」な状態であるため、空気中のホコリや手垢を吸着してしまう性質を持っています。つまり、滑りを良くするために塗ったはずが、結果として汚れを呼び寄せ、短期間で再びスラッジを形成してしまうという悪循環に陥りやすいのです。
| 比較項目 | ボナンザ(フッ素樹脂) | シリコンスプレー(シリコンオイル) |
|---|---|---|
| 主成分 | フッ素樹脂(PTFE) | シリコンオイル |
| 被膜の性質 | 完全乾燥(ドライ) | 半乾燥〜湿潤(ウェット) |
| 防汚性能 | 高い(撥水・撥油で汚れを弾く) | 低い(油分がホコリを吸着する) |
| 持続期間 | 長い(2週間〜1ヶ月以上) | 短い(数日〜1週間程度) |
| 操作感 | サラサラ(初動から軽い) | ヌルヌル(粘性抵抗を感じる場合も) |
ここがポイント
ボナンザは塗布して乾燥させると、溶剤が揮発し、フッ素樹脂の微粒子が表面に定着して完全な「ドライ(乾燥)」被膜を形成します。この被膜はサラサラとしており、ベタつきが一切ありません。そのため、ホコリや汚れが付着しにくく、長期間にわたってクリーンな状態を維持できるのです。
また、シリコンスプレーに含まれる溶剤の種類によっては、ボールや本体のプラスチック樹脂を侵食(ケミカルクラック)してしまうリスクもありますが、ボナンザは釣具(塗装面や樹脂パーツ)への使用を前提としているため、攻撃性が低く安心して使用できます。清潔かつ高性能な状態を維持したいのであれば、ドライな被膜を形成するフッ素樹脂コーティング一択と言えるでしょう。
交換用ボールを購入する前の復活術
「掃除をしても滑りが悪いままなら、もうボール自体が寿命なのだろう」と考え、交換用ボールの購入を検討するユーザーは少なくありません。確かに、ボールは長年の使用で微細な傷がついたり、真球度が落ちたりする消耗品ではありますが、早まって新しいボールを注文する前に、ボナンザによる「復活術」を試してみる価値は十分にあります。
コストパフォーマンスの観点から見てみましょう。メーカー純正の交換用ボールは、機種にもよりますが数千円程度の価格設定となっていることが一般的です。安価なサードパーティ製のボールも存在しますが、これらは個体差によりサイズが微妙に異なったり、表面の仕上げ精度が甘かったりして、純正センサーとの相性問題(カーソルが飛ぶ、反応が悪いなど)が発生するリスクを孕んでいます。
対して、ボナンザ(ワンタッチ50)の実売価格は1,000円前後です。「たかがメンテナンス剤に1,000円も?」と思われるかもしれませんが、トラックボールのメンテナンス1回に使用する量はわずか数滴(0.1ml以下)です。50g入りのボトル1本を購入すれば、数年、あるいはトラックボールの製品寿命が尽きるまで使い切れないほどの回数分、メンテナンスが可能になります。ランニングコストは実質ゼロに近いと言っても過言ではありません。
何より、使い込んで表面が少し荒れてしまった純正ボールであっても、ボナンザのコーティング膜が微細な凹凸を埋め、新品時を凌駕する滑らかさを取り戻せるケースが多々あります。「捨てるはずだったボールが、最高の一品に生まれ変わる」。この感動は、新品を買うだけでは得られない体験です。
M570tやMX Ergo等での効果
トラックボールには、人差し指で操作するタイプや手のひら全体で操作する大玉タイプなど様々な種類がありますが、ボナンザの効果が特に顕著に感じられるのが、ロジクールの「M570t」「M575」「MX Ergo」に代表される親指操作タイプのモデルです。
親指は、人差し指や中指に比べて可動域や器用さが限定される指です。そのため、ボールの滑りが少しでも悪いと、親指の付け根に無駄な力が入り、腱鞘炎や疲労の原因となります。特に、重量のある金属プレートを内蔵し、精密な操作性を売りにしているハイエンドモデル「MX Ergo」では、ボール自体の重さも相まって、静止状態からの動き出し(初動)の重さが気になりがちです。
私自身、これらの機種でボナンザを長期間使用してきましたが、施工後の変化は劇的でした。親指の力を完全に抜いた状態でも、触れるだけでカーソルが反応し、画面の端から端まで一瞬で移動できるようになります。例えば、デュアルモニター環境で作業している際、左のモニターから右のモニターへカーソルを飛ばす動作が、手首を痛めることなく一振りで完了します。
ボナンザワンタッチ50はどこで売ってるか
ここまで読んでボナンザに興味を持たれた方が、次に直面するのが「どこで買えるのか」という問題です。前述の通り、ボナンザはPC周辺機器ではなく「釣具」です。そのため、ヨドバシカメラやビックカメラのPCコーナーを探しても、まず置いてありません。実店舗で購入したい場合は、お近くの「大型釣具店(上州屋、ポイント、キャスティングなど)」へ足を運ぶ必要があります。
釣具店に入ったら、「ロッド(釣り竿)メンテナンス用品」のコーナーを探してください。ルアーやリールの売り場ではなく、竿を磨くためのスプレーなどが並んでいる棚にひっそりと置かれています。店員さんに尋ねる場合は、「竿に塗るフッ素コーティング剤のボナンザはありますか?」と聞けばスムーズです。
もっと手軽なのは、Amazonや楽天市場などのネット通販を利用することです。「ボナンザ ワンタッチ 50」という商品名で検索すればすぐに見つかります。液体タイプやスプレータイプがありますが、トラックボールには無駄なく使える液体タイプの「ワンタッチ 50」が個人的には扱いやすくておすすめです。
製品情報について
ボナンザの具体的な成分や、本来の用途(釣具への効果)についてより詳しく知りたい方は、メーカーの公式サイトも合わせてご確認ください。
(出典:株式会社ボナンザ『ボナンザの使い方』)

トラックボールのメンテナンスでボナンザを使う正しい手順
失敗しない塗り方と磨き上げのコツ
ボナンザを手に入れたら、いよいよトラックボールへの施工です。しかし、ただ適当に塗れば良いというわけではありません。間違った塗り方をすると、コーティングがムラになり、センサーが誤作動を起こしたり、逆に滑りが悪くなったりする可能性があります。「薄く塗って、限界まで磨く」。これが成功への鉄則です。私が実践している、絶対に失敗しないための詳細なステップをご紹介します。
ステップ1:ボールの取り出しと完全洗浄
まずはトラックボール本体からボールを取り外します。多くの機種では底面の穴から指やペンで押し出すことで外れますが、落下させてボールに傷がつかないよう、必ず机の上や柔らかい布の上で作業してください。
取り出したボールは、台所用の中性洗剤を使って水洗いします。指の皮脂や以前塗った古いコーティング剤を完全にリセットするため、手のひらで転がしながらキュキュッという手触りになるまで丁寧に洗ってください。この「脱脂」が甘いと、ボナンザが弾かれてしまい上手く定着しません。
ステップ2:水分の除去と乾燥
洗浄後は、清潔なタオルやキッチンペーパーで水分を完全に拭き取ります。ボナンザは溶剤ベースのため、水分が残っていると成分が分離してしまいます。念を入れるなら、拭き取った後に数分間自然乾燥させると完璧です。
ステップ3:ボナンザの塗布
ここが重要なポイントです。柔らかい布(メガネ拭きのようなマイクロファイバークロスが最適)に、ボナンザ液を「ごく少量(1〜2滴)」垂らします。そして、ボール全体に薄く、均一に塗り広げていきます。表面がうっすらと濡れたような状態になれば十分です。液が垂れるほど塗るのは明らかに厚塗りしすぎですので、注意してください。
ステップ4:乾燥と定着
塗り広げたら、そのまま5分〜10分程度放置します。この間に溶剤が揮発し、表面が白っぽく曇ってきます。これはフッ素樹脂成分が表面に残り始めたサインです。慌ててすぐに拭き取らず、しっかりと乾くのを待つことが、耐久性の高い被膜を作るコツです。
ステップ5:魂の磨き上げ
最後に、塗布用とは別の、乾いたきれいなマイクロファイバークロスを使って磨き上げを行います。ここでの力加減は「優しく」ではありません。「親の仇」を取るくらいの勢いで、強く、素早くゴシゴシと磨いてください。
強く擦ることで発生する「摩擦熱」を利用して、フッ素樹脂をボールの表面に焼き付けるようなイメージです。最初は抵抗を感じますが、磨き続けるとフッと軽くなり、指で触れるとツルツルの感触に変わります。光にかざして、鏡のように背景が映り込むレベルまで磨き上げれば完成です。
センサー飛びや反応不良を防ぐ対策
意気揚々とボナンザコーティングを施し、期待に胸を膨らませてボールを本体に戻した瞬間、カーソルが全く動かなかったり、画面の端へ勝手に飛んでいったりする(通称:カーソル飛び)現象に遭遇することがあります。「せっかくメンテナンスしたのに壊してしまったのか!?」と青ざめる瞬間ですが、どうか落ち着いてください。故障ではありません。このトラブルの9割は、施工ミスやメンテナンス不足による一時的なものです。
最大の原因として考えられるのは、先ほども少し触れた「ボナンザの塗りすぎ(厚塗り)」です。現在のトラックボールの主流である光学式センサーは、ボール表面の微細なパターン(模様や傷)をカメラで撮影し、その移動量を解析してカーソルを動かしています。もしボナンザの被膜が厚すぎてムラになっていたり、液剤がダマになっていたりすると、光が乱反射してしまい、センサーがボールの模様を正しく読み取れなくなってしまうのです。
この状態に陥った場合の解決策は一つ、「一度洗い流して、やり直す」ことです。勿体ないと感じるかもしれませんが、ムラになった被膜の上から修正しようとしても上手くいきません。再度中性洗剤でボールを洗い、今度は「本当に塗れているのか?」と不安になるくらい薄く、限界まで薄く塗り広げてから、乾燥・磨き上げの工程を行ってください。
センサー清掃の注意点
ボールだけでなく、受け手である「センサー窓の汚れ」も疑う必要があります。ボールカップの底にある透明なレンズ部分にホコリが付着していると、それだけでカーソルは正常に動かなくなります。清掃する際は、カメラ用のブロアーでホコリを吹き飛ばすか、柔らかい綿棒で優しく撫でる程度に留めましょう。
施工後に白くなる現象への対処法
ボナンザでのメンテナンスに慣れていない方が必ずと言っていいほど直面するのが、「磨いても磨いてもボールが白っぽく曇る」という現象です。特に、ロジクールのM570tやM575のようなグレーや青色のボールを使っていると、表面に白い粉が吹いたようになり、見た目が悪くなって不安になることがあります。
結論から言うと、この白さは「余剰成分の残り」であり、失敗ではありませんが、仕上げとしては「まだ途中」の段階です。ボナンザの液体には、フッ素樹脂だけでなく、それを溶かすための溶剤や添加剤が含まれています。乾燥させた直後はこれらが表面に浮き出ている状態なのです。
対処法はシンプルで、「透明な光沢が出るまで、ひたすら磨き続ける」ことです。ここで重要なのが、クロスの「面」をこまめに変えることです。一度拭き取ったクロス面には余分な成分が付着しています。そのまま同じ面で磨き続けると、拭き取った成分をまた塗り広げているだけになってしまいます。常にクロスのきれいな新しい面を使って、磨き上げてください。
「親の仇のように磨く」と前述しましたが、これは精神論だけでなく、物理的な意味があります。フッ素樹脂は摩擦係数が低いため、定着させるのにある程度の圧力と熱が必要です。しっかりと磨き込まれたボールは、白さが消えるだけでなく、指で触れた瞬間に「あ、これは違う」と分かるほどスベスベの質感に変化します。
最適なメンテナンス頻度と持続期間
「一度ボナンザを塗ったら、いつまで効果が続くのか?」という疑問は、ランニングコストや手間の面で非常に重要です。私の経験則、および多くのトラックボール愛好家の意見を総合すると、一般的なデスクワーク(1日8時間程度の使用)において、「2週間〜1ヶ月」がひとつの目安となります。
シリコンスプレーの場合、効果の持続はせいぜい数日から1週間程度です。シリコンオイルは流動性があるため、ボールを回転させているうちに支持球へ移ったり、手汗で流れたりしてすぐに無くなってしまいます。対してボナンザはドライな被膜として定着するため、物理的な接触で削げ落ちるまで効果が持続します。これが圧倒的な持続期間の差となって現れます。
メンテナンスのタイミングを見極めるサインは、「初動の重さ」です。施工直後の「触れただけで動く」感覚が薄れ、動き出しに僅かな抵抗を感じるようになったら、被膜が薄くなってきた証拠です。完全に効果がなくなるまで待つ必要はありません。早めに再施工することで、常にベストなコンディションを維持できます。
日々のミニ・メンテナンス
2週間に1回の本格的なボナンザ施工とは別に、毎日の作業終わりにティッシュやクロスでボールを軽く乾拭きする習慣をつけましょう。ボナンザの防汚効果のおかげで、サッと拭くだけで手脂が落ち、翌朝の滑り出しが驚くほど快適になります。
SlimBladeなど大玉モデルの注意点
Kensingtonの「SlimBlade Trackball」や「Expert Mouse」、あるいはエレコムの「HUGE」など、直径50mmを超える「大玉」モデルをお使いの方にとって、ボナンザはさらに強力な武器となりますが、施工には少しコツが必要です。
まず、ボールの表面積が広いため、一度に全体を塗ろうとすると、最初に塗った部分が乾きすぎてムラになりやすい傾向があります。大玉の場合は、ボールを「北半球」と「南半球」のように半分ずつに分けて、塗布と磨き上げを行うと失敗が少なくなります。
そして最大の変化は「慣性回転(イナーシャ)」の強化です。大玉トラックボールの醍醐味は、指で勢いよく弾いた時にボールが回り続ける慣性移動にありますが、ボナンザを施工すると摩擦抵抗が激減するため、この回転が恐ろしいほど持続するようになります。まるでハンドスピナーのように「シャーッ」と回り続ける様は圧巻です。
トラックボールのメンテナンスはボナンザで完結
長くなりましたが、今回は「トラックボール メンテナンス ボナンザ」という検索キーワードに辿り着いた同志の皆様に向けて、その効果と具体的なノウハウを徹底的に解説してきました。ここまでの内容を総括します。
| 結論 | トラックボールのメンテナンスには、釣具用「ボナンザ ワンタッチ 50」が最強のソリューションである。 |
| 理由 | フッ素樹脂による「ドライ被膜」が、圧倒的な低摩擦と防汚性を両立し、長期間持続するから。 |
| 極意 | 「薄く塗って、親の仇のように磨く」。これさえ守れば失敗はない。 |
トラックボールは、使い手の手になじむほどに使いやすくなる道具ですが、メンテナンスを怠ればただの「使いにくいボール」に成り下がります。しかし、ボナンザという1,000円程度の投資と、月に一度のわずかな手間で、その操作感は新品を遥かに凌駕する「神デバイス」へと進化します。
まだ試していない方は、今すぐ近所の釣具店へ走るか、ネット通販でポチってみてください。施工が終わったボールを指で弾いた瞬間、「なんでもっと早くやらなかったんだ!」と叫びたくなるはずです。ヌルヌル、スルスルと意のままに動くカーソルと共に、あなたのデスクワークがより快適で、生産的なものになることを心から願っています。
センサー飛びや反応不良を防ぐ対策
意気揚々とボナンザコーティングを施し、期待に胸を膨らませてボールを本体に戻した瞬間、カーソルが全く動かなかったり、画面の端へ勝手に飛んでいったりする(通称:カーソル飛び)現象に遭遇することがあります。「せっかくメンテナンスしたのに壊してしまったのか!?」と青ざめる瞬間ですが、どうか落ち着いてください。故障ではありません。このトラブルの9割は、施工ミスやメンテナンス不足による一時的なものです。
最大の原因として考えられるのは、先ほども少し触れた「ボナンザの塗りすぎ(厚塗り)」です。現在のトラックボールの主流である光学式センサーは、ボール表面の微細なパターン(模様や傷)をカメラで撮影し、その移動量を解析してカーソルを動かしています。もしボナンザの被膜が厚すぎてムラになっていたり、液剤がダマになっていたりすると、光が乱反射してしまい、センサーがボールの模様を正しく読み取れなくなってしまうのです。
この状態に陥った場合の解決策は一つ、「一度洗い流して、やり直す」ことです。勿体ないと感じるかもしれませんが、ムラになった被膜の上から修正しようとしても上手くいきません。再度中性洗剤でボールを洗い、今度は「本当に塗れているのか?」と不安になるくらい薄く、限界まで薄く塗り広げてから、乾燥・磨き上げの工程を行ってください。ボナンザは「塗る」というより「擦り込む」イメージで使うのが正解です。
また、ボール側だけでなく、受け手である「センサー窓の汚れ」も疑う必要があります。ボールを取り出した本体の内部、ボールカップの底にある透明なレンズ部分を見てください。ここにホコリや抜け毛が一本でも付着していると、それだけでカーソルは正常に動かなくなります。
センサー清掃の注意点
センサー部分は非常にデリケートです。指で触ったり、硬い布でゴシゴシ拭いたりするのは厳禁です。傷がつくと誤動作の恒久的な原因になります。清掃する際は、カメラ用のブロアーでホコリを吹き飛ばすか、柔らかい綿棒で優しく撫でる程度に留めましょう。
意外な落とし穴として、無線レシーバーの通信環境が影響しているケースもあります。メンテナンス直後はボールの滑りが良すぎて、今まで以上に細かくボールを動かすようになります。その結果、これまで顕在化していなかった通信の遅延や干渉が「カーソルの引っかかり」として感じられることがあるのです。USBレシーバーをUSBハブ経由ではなくPC本体のポートに直挿ししたり、延長ケーブルを使ってトラックボールの近くまで持ってきたりすることで改善する場合もあります。
メーカー推奨のトラブルシューティング
センサーの清掃方法や通信環境の改善については、各メーカーのサポートページにも詳細な手順が掲載されています。エレコムなどの公式サイトでは、図解付きで分かりやすく解説されていますので、どうしても改善しない場合は一度確認してみることをお勧めします。
(出典:エレコム株式会社『トラックボールの動きが悪い・カーソルが飛ぶ場合の対処法』)
施工後に白くなる現象への対処法
ボナンザでのメンテナンスに慣れていない方が必ずと言っていいほど直面するのが、「磨いても磨いてもボールが白っぽく曇る」という現象です。特に、ロジクールのM570tやM575のようなグレーや青色のボールを使っていると、表面に白い粉が吹いたようになり、見た目が悪くなって不安になることがあります。
結論から言うと、この白さは「余剰成分の残り」であり、失敗ではありませんが、仕上げとしては「まだ途中」の段階です。ボナンザの液体には、フッ素樹脂だけでなく、それを溶かすための溶剤や添加剤が含まれています。乾燥させた直後はこれらが表面に浮き出ている状態なのです。
対処法はシンプルで、「透明な光沢が出るまで、ひたすら磨き続ける」ことです。ここで重要なのが、クロスの「面」をこまめに変えることです。一度拭き取ったクロス面には余分な成分が付着しています。そのまま同じ面で磨き続けると、拭き取った成分をまた塗り広げているだけになってしまいます。常にクロスのきれいな新しい面を使って、磨き上げてください。
もし、どれだけ磨いても白さが取れない、指紋のようなムラが残るという場合は、明らかに塗布量が多すぎます。その場合は、一度きれいな布で強めに拭き取って(場合によっては少し湿らせた布で拭いて)、再度乾いた布で仕上げ磨きを行ってください。正しく施工できたボールは、蛍光灯の下にかざすと、照明の形がくっきりと歪みなく反射します。表面が曇っていて照明の輪郭がぼやけているうちは、まだ磨きが足りない証拠です。
「親の仇のように磨く」と前述しましたが、これは精神論だけでなく、物理的な意味があります。フッ素樹脂は摩擦係数が低いため、定着させるのにある程度の圧力と熱が必要です。しっかりと磨き込まれたボールは、白さが消えるだけでなく、指で触れた瞬間に「あ、これは違う」と分かるほどスベスベの質感に変化します。この「スベスベ感」こそがボナンザの真骨頂であり、妥協せずに磨き切った者だけが得られる快感なのです。
最適なメンテナンス頻度と持続期間
「一度ボナンザを塗ったら、いつまで効果が続くのか?」という疑問は、ランニングコストや手間の面で非常に重要です。私の経験則、および多くのトラックボール愛好家の意見を総合すると、一般的なデスクワーク(1日8時間程度の使用)において、「2週間〜1ヶ月」がひとつの目安となります。
シリコンスプレーの場合、効果の持続はせいぜい数日から1週間程度です。シリコンオイルは流動性があるため、ボールを回転させているうちに支持球へ移ったり、手汗で流れたりしてすぐに無くなってしまいます。対してボナンザはドライな被膜として定着するため、物理的な接触で削げ落ちるまで効果が持続します。これが圧倒的な持続期間の差となって現れます。
メンテナンスのタイミングを見極めるサインは、「初動の重さ」です。施工直後の「触れただけで動く」感覚が薄れ、動き出しに僅かな抵抗を感じるようになったら、被膜が薄くなってきた証拠です。完全に効果がなくなるまで待つ必要はありません。早めに再施工することで、常にベストなコンディションを維持できます。
また、ボナンザには「重ね塗り」の効果も期待できます。一度の施工で完成させるのではなく、定期的にメンテナンスを繰り返すことで、ボール表面の微細な凹凸にフッ素樹脂が入り込み、コーティングの層(レイヤー)が育っていきます。長年ボナンザで管理されたボールは、新品のボールよりも遥かに滑らかで、深い艶を帯びるようになります。これを「ボールを育てる」と表現する愛好家もいるほどです。
日々のミニ・メンテナンス
2週間に1回の本格的なボナンザ施工とは別に、毎日の作業終わりにティッシュやクロスでボールを軽く乾拭きする習慣をつけましょう。ボナンザの防汚効果のおかげで、サッと拭くだけで手脂が落ち、翌朝の滑り出しが驚くほど快適になります。これだけでコーティングの寿命も延びます。
SlimBladeなど大玉モデルの注意点
Kensingtonの「SlimBlade Trackball」や「Expert Mouse」、あるいはエレコムの「HUGE」など、直径50mmを超える「大玉」モデルをお使いの方にとって、ボナンザはさらに強力な武器となりますが、施工には少しコツが必要です。
まず、ボールの表面積が広いため、一度に全体を塗ろうとすると、最初に塗った部分が乾きすぎてムラになりやすい傾向があります。大玉の場合は、ボールを「北半球」と「南半球」のように半分ずつに分けて、塗布と磨き上げを行うと失敗が少なくなります。
そして最大の変化は「慣性回転(イナーシャ)」の強化です。大玉トラックボールの醍醐味は、指で勢いよく弾いた時にボールが回り続ける慣性移動にありますが、ボナンザを施工すると摩擦抵抗が激減するため、この回転が恐ろしいほど持続するようになります。まるでハンドスピナーのように「シャーッ」と回り続ける様は圧巻です。
しかし、これは逆に言うと「止まりにくい」ということでもあります。施工直後は滑りが良すぎて、狙ったボタンの上でカーソルを止めるのに苦労するかもしれません。その場合は、OSのマウス設定や専用ドライバ(KensingtonWorksなど)で、ポインターの速度(DPI)を少し下げてみてください。滑りが良くなった分、感度を下げることで、精密な操作性と広範囲の移動を両立させる「究極の設定」が見つかるはずです。
また、大玉モデルはその重量ゆえに支持球への負担も大きくなりがちですが、ボナンザのコーティングは摩擦を減らすことで支持球の摩耗(削れ)を防ぐ保護効果もあります。高価なハイエンド機を長く大切に使いたい方こそ、必須のメンテナンスと言えるでしょう。

トラックボールのメンテナンスはボナンザで完結
長くなりましたが、今回は「トラックボール メンテナンス ボナンザ」という検索キーワードに辿り着いた同志の皆様に向けて、その効果と具体的なノウハウを徹底的に解説してきました。ここまでの内容を総括します。
| 結論 | トラックボールのメンテナンスには、釣具用「ボナンザ ワンタッチ 50」が最強のソリューションである。 |
| 理由 | フッ素樹脂による「ドライ被膜」が、圧倒的な低摩擦と防汚性を両立し、長期間持続するから。 |
| 極意 | 「薄く塗って、親の仇のように磨く」。これさえ守れば失敗はない。 |
トラックボールは、使い手の手になじむほどに使いやすくなる道具ですが、メンテナンスを怠ればただの「使いにくいボール」に成り下がります。しかし、ボナンザという1,000円程度の投資と、月に一度のわずかな手間で、その操作感は新品を遥かに凌駕する「神デバイス」へと進化します。
まだ試していない方は、今すぐ近所の釣具店へ走るか、ネット通販でポチってみてください。施工が終わったボールを指で弾いた瞬間、「なんでもっと早くやらなかったんだ!」と叫びたくなるはずです。ヌルヌル、スルスルと意のままに動くカーソルと共に、あなたのデスクワークがより快適で、生産的なものになることを心から願っています。
それでは、良きトラックボールライフを!